根管治療とは
歯の根っこの治療
根管治療には、大きく分けて二つの治療があります。
①抜髄
大きなむし歯などで、はじめて神経の処置をする場合。
②感染根管治療
過去に抜髄をしている歯が、細菌感染を起こして膿が溜まってしまい、再治療が必要になった場合。
歯の神経は「根管」という細い管で包まれており、神経に虫歯の被害が及ぶということは根管の中にも感染が及ぶということです。そのため、神経を抜いた後は根管内に残っている感染部位を綺麗にする必要があります。
マイクロスコープを使うことで、歯の神経を除去する前に「全ての虫歯に侵された歯の部分を除去する」ことの成功率が高くなります。
「マイクロスコープを用いた根管治療」でできること
- Point.01抜歯を防ぐことができる
- 万が一虫歯菌に侵された部分の取り残しがあると、数年後骨と接するところまで虫歯が進行して、抜歯になってしまう可能性がありますが、そのリスクを避けることができます。
- Point.02治療に先立つ感染防止処置をより正確に行う
- 菌や細菌の管に入り込まないよう、感染防止前処置をより正確に行うことができます。
- Point.03勘に頼らない見える治療
- 従来は術者の長年の経験からの勘が重要でしたが、マイクロスコープを使うことでより正確に処置ができます。
治療精度を高める
マイクロスコープ
マイクロスコープについて
歯科治療には細かい作業がつきものですので、その点で視野を30倍まで拡大できるマイクロスコープがさまざまな場面で活躍します。 このマイクロスコープによって、従来手探りだった根管治療など緻密さが必要な治療の精度が劇的に向上しています。
マイクロスコープの特徴
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肉眼の約30倍に拡大できる
肉眼の約30倍で患部を見ることができるため、経験と勘に頼らず治療できます。
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患部を明るく照らすことができる
患部を明るく照らすことができ、暗い口腔内でも良く見て治療ができます。
マイクロスコープの視野について
肉眼と拡大鏡、マイクロスコープを使用した際の見え方を見てみましょう。肉眼では見落としてしまうことも十分ありえるのですが、視野を拡大するとより鮮明に見る事ができます。「患部がしっかり見える」ということは削るべき場所をしっかり削り、残すべき場所をきちんと残せるということです。これによって患者さんの大切な歯を保存できる確率が上がります。
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肉眼の視野
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拡大(約3.5倍)
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拡大(約30倍)
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肉眼の視野
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拡大(約3.5倍)
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拡大(約30倍)
根管治療の成功率が低い理由
とても複雑な形状をした根管内
根管は形状や長さが決まっているものではなく、曲がりくねっていたり、細かく枝分かれしていたりすることがあります。さらに根管自体は非常に細く、肉眼で中を見ることはできないので、以前は感染部位を完全に除去することは難しいとされてきました。特に奥歯の場合、根管の形状が複雑なことが多いので、根管治療の難易度が上がります。
その場合は歯を一度抜いて歯の根の先をしっかり目視して元の場所に戻して治療することもあります。歯根膜の状態が良好であれば再度通常のように噛むこともできます。
感染防止対策が不十分である
現在のようにさまざまなツールが普及する前は、根管治療が不十分だったために、しばらくして痛みや膿が出て再治療が必要になることもありました。患者さんにしてみれば、「しっかり治療を受けたはずなのに」と思われることでしょう。しかし近年は治療器具が発達したことによって、再治療をするリスクは大きく低減できるようになっています。
隔壁を設けることで根管内への異物、唾液混入を防ぎます。
従来の根管治療と拡大視野
マイクロスコープで行う根管治療の違い
マイクロスコープを使うことによって、肉眼では見えない部分をしっかり確認できます。マイクロスコープは虫歯で歯を削る際や、詰め物・被せ物の段差を取るときにも役立ちますが、根管治療でも感染部位を効率よく取り除くために活躍します。
従来の根管治療
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Step01
肉眼で行う根管治療
暗くて複雑な形状をしているため、肉眼では見る事が出来ません。
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Step02
虫歯の取り残しによる再発
歯科医師の勘に頼ることになり、虫歯の取り残しが起きてしまいます。
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Step03
再治療を繰り返し、抜歯に至る
取り切れなかった虫歯が根管内で拡がり、さらに大きな虫歯となり抜歯に至ります。
マイクロスコープを使用した根管治療
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Step01
マイクロスコープで行う根管治療
しっかりと拡大して見ることができるので、虫歯の取り残しリスクを限りなく抑えられます。
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Step02
取り残しがないため良好な経過
虫歯の取り残しがないと、再発リスクも大幅に抑えることができます。
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Step03
メインテナンスで健康な歯を維持
外部からの虫歯の再発リスクはあるので、定期的にメインテナンスを行いましょう。
根管治療の成功のカギは「拡大して見ること」
歯科や外科の領域では「直視直達」という言葉があります。根管治療を成功させるにはマイクロスコープによって直接「見える」ようにして、そこに手探りではなくすぐに到達することが大切です。これによって、従来よりもはるかに治療の成功率は上がります。
また、感染源や暗い口の奥の患部に対して、歯科医師の手探りの治療ではなくしっかり直接「見える」状態での治療を行うことで、丁寧なのに短時間で治療を行うことが可能になります。
根管治療時の感染防止対策
当院ではゴム製のシート「ラバーダム」と、吸引式の感染防止策「ZOO」を、歯やお口の状態によって使い分けています。
唾液が流れ込むのを防止する「ラバーダム」
ラバーダムとは、治療する歯のみをゴム製の膜で保護をして、唾液やお口の呼気をシャットアウトできる器具です。
根管治療時は特に虫歯菌の感染に注意を払うため、虫歯の再発防止にはラバーダムが必須と言えます。しかし、デメリットとしてお口の中の唾液が治療中にたまったり、歯に引っ掛けることで歯ぐきを傷つけるケースがあります。
唾液を持続吸引する「ZOO」
ZOOは持続的に吸引を行いながら、治療中の歯の中に唾液が入ってくることを防止する器具です。ラバーダムのように歯に引っ掛けるためには、歯の材質が残っていないと引っ掛けられませんが、こちらは持続的に吸引することで唾液が歯に触れないようにしています。
ゴムで歯を囲うことはありませんが、ラバーダムと同程度の感染防止効果があります。
よくある質問
- 治療中に痛みは感じますか?
- 麻酔を行い治療をしますので、治療時に痛みはほぼありません。稀に麻酔が効かない体質の方もおりその際は痛みを感じる場合があります。ご不安な方は、事前にご相談ください。
- 根管治療にかかる時間はどれくらいですか?
- 歯や口腔内の状況によりですが、1回の治療で1時間~2時間で、2~3回ほどの治療で終了となります。
- 歯髄炎とは何ですか?
- 虫歯の進行の度合いによって1〜4段階に分かれています。一般的に歯髄炎とは3段階目のことを指します。歯の神経まで虫歯菌が進んでいる状態です。歯髄炎は冷たいもの、温かいもので歯がしみたり痛んだりします。歯の神経が細菌に感染してしまっている状態です。